東京から 1,845 億円 が、消えた

ふるさと納税が動かす 5 兆円の地図

2024 年度、ふるさと納税で日本中を行き来したお金は 5 兆 712 億円。制度が始まった 2008 年は 317 億円——16 年で 160 倍に膨らんだ。

集まる地方と、出ていく都市。47 都道府県のあいだで起きている、税の地理的な再配分を、スクロールで重ねていく。

最終データ更新: 2026 年 5 月 17 日 / スクロールすると、地図が動きます。所要 約 5 分。

16 年で 160 倍、5 兆円の制度に育った

ふるさと納税は、自分の選んだ自治体に寄附すると、その額(自己負担 2,000 円を除く)が住民税・所得税から差し引かれる仕組み。2008 年に始まり、最初の年は 317 億円 しか動かなかった。

2015 年に控除上限が倍になってから加速し、2024 年度は 5 兆 712 億円。日本の地方税収(約 47 兆円)の 1 割超 に相当する規模になった。

素直に「どこに集まったか」を見る

地図は、各都道府県内の自治体が 2024 年度に受け取った合計額。色が濃いほど、たくさん集めた県。

北海道がトップ 1,800 億円。返礼品にホタテ・カニ・牛肉を抱える農畜水産県が並ぶ。宮崎、山形、鹿児島、佐賀。東京・大阪・神奈川は、ぽっかりと薄い。

でも、これは「片側の絵」だ

受入額の地図だけ見ても、制度の正体は分からない。寄附した人は、住んでいる自治体から 同額の税を控除される。だから受入額のとなりに、必ず控除額の影がある。

次に見るのは、受入額から控除額を引いた「収支」。集めた以上に住民が外へ寄附した県は赤、たくさん集めた県は青。

黒字 1 位は、北海道 +1,576 億円

受入額から控除額を引くと、地図が 「青く膨らむ地方」と「赤く凹む都市」 に分かれた。

🥇 北海道 +1,576 億円
🥈 宮崎県 +551 億円
🥉 山梨県 +422 億円
4 位 山形県 +421 億円  5 位 鹿児島県 +383 億円

いずれも県内総生産が小さい県。年に 県予算の数 % に届く規模のお金が、外から流れ込んでいる。

赤字 1 位は、東京都 −1,845 億円

逆方向に振り切れているのが、大都市圏だ。

47 位 東京都 −1,845 億円
46 位 神奈川県 −651 億円
45 位 埼玉県 −371 億円
44 位 大阪府 −279 億円  43 位 愛知県 −266 億円

東京都が受け取った額は 146 億円。一方、都民が外の自治体に寄附して控除された額は 1,991 億円。差し引きで 1,845 億円が、都の住民税収から消えた。これは都の年間住民税収の約 1 割に相当する。

47 県を 1 枚の絵に置くと、東京の異常さが見える

受入額(x)と控除額(y)の散布図。点の大きさは 受入件数、色は黒字(青)/赤字(赤)。点線は y=x の境界——上にあれば赤字、下にあれば黒字。

他の 46 県が概ね 「対角線の近く」 に並ぶなか、東京都だけが圧倒的に左上 に外れている。受け取った額の 14 倍 が、外へ流れていった。

稼ぐ自治体は、必ずしも県庁所在地ではない

都道府県の枠を外して、自治体ランキングを見ると、上位は意外な顔ぶれだ。

宝塚市は寄附 1 件あたり 324 万円——巨額の単発寄附が集まる仕組みを持つ。一方の白糠町は人口 7,000 人 の漁村に 133 万件 の寄附が舞い込んだ。ホタテ・イクラの威力だ。

これは「地方創生」だったのか

受入額の TOP は、農畜水産が強い県。返礼品の競争力が、寄附の流れを決める。一方、出ていく側の TOP は、年収の高い住民が集中する大都市。高所得者ほど控除上限が大きいため、都市から地方への富の移動が起こる。

制度は「自分の故郷を応援する」ために設計された。だが実際に動いているのは、「返礼品が魅力的な土地への、消費に近い寄附」

次にカニや牛肉を選ぶとき、それが地図のどこから動いた金か、少しだけ見える。

出典: 総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」国土数値情報(国土交通省)国土地理院 地理院タイル