杉並区は 2018 年から 待機児童ゼロ を維持し続けている。だがそれは、0 が達成されているということではない。282 か所 の保育施設が、毎朝 受け皿として動いていることの結果だ。
そのうち 公立はわずか 36 か所。残りの 239 か所は私立 が支えている。
地図に落としたとき、その 282 個の点は、区内のどこに、どんな密度で並んでいるのか。そして、並んでいない場所は どこか。
これは杉並区の認可保育所 241(公立 30 + 私立 204 + 認可外 7)と、幼稚園 41(公立 6 + 私立 35)。合計 282 か所。
区の面積は 34 km²。1 km² あたり 8 か所、点と点の間隔はほぼ徒歩 5 分。「白いところがほぼ無い」のが、この地図の最初の印象だ。
2013 年、認可保育所の選考に落ちた杉並区の親たちが、行政不服審査を申し立てた事件があった。当時、区内に 「保育園に入れない」と訴える親 が公に可視化されたタイミングだ。
その 5 年後、2018 年 4 月、杉並区は 待機児童ゼロ を達成。以降、毎年ゼロを維持している。 この地図の点は、その「ゼロ」を支えている現役の保育施設だ。
ズームすると、JR 中央線・総武線の 阿佐ヶ谷・荻窪・高円寺・西荻窪 から半径 1 km の中に、点が密に並ぶのが見える。
南北バス「すぎ丸」がカバーする住宅地まで、点は途切れずに広がる。区内 120 町丁に少なくとも 1 か所、保育園が立っている。
色を「公立 36」と「私立 239」で塗り分けると、地図はほぼピンク一色になる。
🏛 公立(区立保育所 + 公立幼稚園) 36 か所 12.8 %
🏠 私立(民間保育所 + 私立幼稚園) 239 か所 84.8 %
◯ 認可外 7 か所 2.5 %
「待機児童ゼロ」は、区が 保育所を直営で増やしたのではなく、民間に増設を任せた 結果でもある。84 町丁では、公立ゼロ、私立だけが受け皿を担う。
保育園を出た後の小学生のためには、別の 90 か所——学童クラブが用意されている。さらに地域ボランティアが運営する 子ども食堂 が 32 か所。
0 歳から小学生まで、404 か所 の何らかの受け皿が、区の地図に常時 立っている。
ここまでは「供給」の地図だ。今度は需要側——町丁ごとの 0-5 歳人口 を、円のサイズで重ねてみる。22,262 人が 139 町丁に散らばっている。
中央線沿線と環八通り沿いに、大きな円——つまり 子どもの集中地 が並ぶ。供給の地図とほぼ重なる。
重ね合わせを精査すると、保育所も幼稚園もない 町丁が 11 ある。そこに住む 0-5 歳児を合計すると、1,330 人。
成田東 5 丁目 189 人 / 0 施設
和泉 1 丁目 167 人 / 0 施設
南荻窪 3 丁目 145 人 / 0 施設
下高井戸 1 丁目 132 人 / 0 施設
西荻北 3 丁目 132 人 / 0 施設……
「町丁に保育園がない」≠「通えない」。隣の町丁から徒歩 5 分以内に必ず点はある。だが 「ゼロ」の地図にも、空白の町丁は確かに存在する。
0-5 歳児 22,262 人 を 282 か所で割ると、1 か所あたり 78.9 人。さらに分解すると:
私立 239 か所 → 1 か所あたり 93.1 人
公立 36 → 1 か所あたり 618 人
認可外 7 → 1 か所あたり 3,180 人
「待機児童ゼロ」は、達成された瞬間の数字でしかない。地図にすると、それを 毎日 続けている物理 が見える。282 か所 のほぼ 9 割を私立が背負っていること、そして 11 町丁の 1,330 人が隣町の点に頼って毎日通っていることも、この地図の上にちゃんと写っている。
あなたの最寄り駅にも、たぶん 5 か所ある。そのうち 1 か所が公立かどうかは、もう少し別の話。
本記事の数字はすべて、杉並区が公開しているオープンデータ(CC BY 4.0)と国土地理院・国土数値情報の一次データから、自前で計算した値です。データスナップショットは令和 7 年 2 月 1 日時点。
杉並区<町丁名> を GSI でジオコード。
杉並区オープンデータ (CC BY 4.0) — 子育て施設・子ども食堂・町丁別人口
国土数値情報 N03 行政区域 (CC BY 4.0)
国土地理院 アドレスマッチング API
国土地理院 地理院タイル (淡色)